悪性骨軟部腫瘍の治療の流れ - 遺伝子診断

 骨軟部腫瘍の治療では、まず生検術で組織型を確定診断し、その組織型に基づいて治療法を決定します。病理診断は、前述のように時に難しいこともあり、免疫染色や電子顕微鏡の使用など、2〜3週間かかることがあります。この間、診断がつかないためなかなか治療開始できない状態となります。
 近年、骨軟部腫瘍で組織特異的な融合遺伝子が発見され、この疾患特異的な融合遺伝子を用いての遺伝子診断が臨床の場で期待されています。岡山大学では、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、明細胞肉腫、粘液型脂肪肉腫で認められる融合遺伝子が診断に有用であることを研究発表しました。現在、岡山大学整形外科では必要に応じて融合遺伝子解析を行っています。日本国内で、骨軟部腫瘍の融合遺伝子に関して、基礎的研究を行っている施設はいくつかありますが、臨床応用を行っている施設はほとんどありません。岡山大学整形外科では、1998年より融合遺伝子の基礎的研究をスタートし、2002年より臨床応用へ向けての準備を行ってきました。2003年より病理部と協力して、融合遺伝子解析を病理診断の補助診断法とするシステムを作ってきました。早ければ24時間以内に融合遺伝子解析の結果を見て確定診断できれば、迅速に治療方針を決定し、スムーズに治療を開始できます。

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